Mystic River

沈黙する川、饒舌な銃-映画『Mystic River』を観て。

少年の時被害を受けた者の心の深淵は川のように測り知れない。
もしあの時車に乗っていなかったら、
乗っていたのが自分だったら...と分かれ道を振り返ってみても
ある一定の深さまでにしか理解は及ばないだろう。
その分岐点以来
彼とは別の価値観、別の世界観で生きてきた者たちには
彼を突き動かした正義感と衝動がわからなかったのかもしれない。
そう考えるとやりきれなかった。

映画の結末にカタルシスはなかった。
カタルシスのない映画は現実の世界に対しての疑問を抱かせる。
銃のある法治国家は真の法治国家ではないのでは...という疑問。
裏切り者は銃で処刑し川に流す。肉親を奪った者も銃で復讐し黄泉に沈める。
Mystic Riverの町のそんな自前の浄化装置、
自由な銃をつかった浄化装置がはたらいている社会は真の法治社会とは言えないのでは...
と考えてしまう結末。
悪は処刑され滅ぼされ町は浄化され平和なように見えるが
一方で笑っていない人悲しみに沈んでいる人たちがいる！
その対比が観る人をすっきりさせてくれない。

カタルシスのない不安定な結末をとったことで
監督は、罪と罰の主観的な解釈の危険性や罰の恣意的な適用の功罪に言及しているように思った。
個人が罪を定義し、個人が罰（復讐）を実行できる環境の危険性、
銃のある法治社会の矛盾について批判的なようにも感じられた。
さらに範囲を広げて考えれば
Mystic Riverの町だけでなくground zeroの罪と罰にまで至る。
罪の主観的な認定と罰の恣意的な適用、
その結果はやはり平和の仮面を被った世界になる。
銃が饒舌すぎて川が沈黙しすぎては正義にはならない。

Massachusetts州にはMystic Lake も Mystic Riverもあるらしい。

to be continued...!?

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